しばしの・・・

「それじゃ、ソッコーで合格して戻ってくるぜ」
「うん!」

ハンター試験のために、急遽現実世界へ戻ることになったキルアは、通行チケットのカードを出しながらそんなことをゴンに言う。
「ドーレ港のそばの・・・・」

(ゴンのやつ・・・・、俺と離れるから、半べそくらいかいて『早く帰ってきてね・・・』とか言うと思ったんだけどなぁ・・・・。そういうわけにもいかないか・・・・。
俺・・・、贅沢言い過ぎなのかなぁ・・・・・・?)
キルアはフーッと息をついた。

「キルア?聞いてる??」
「ああ?ドーレ港のそばの一本松のある山のキリコっていう魔獣に会場までつれてってもらえばいーんだろ」
キルアは、ニィと笑って答える。
「・・・じゃあ、行ってくるよ」
しばしの別れを振り払うかのように思いっきり手を振る。

(やっぱり、俺って贅沢言い過ぎなのかな・・・?
ゴンに別れ惜しんでほしいなんて思ってるなんてさ・・・・・。
実際アイツ、すごくサバサバしてたしなー・・・・。てかこれからゴンいないのかー・・・)

キルアはもう一度フーッと息をついた。
すると、遠くで何かが聞こえたような気がした。
はじめは、気のせいだと思っていたのだが、それはだんだんと大きくなってくる・・・
ゴンだ!!!

「キルアーッッ!!!」
「ゴン・・・どうして・・・?」
ビスケと一緒に行ったはずのゴンがなぜここにいるのかがとても不思議だった。

「・・・・忘れ物したから・・・・」
「忘れ物・・・・???う~ん・・・・なにかあったっけ?必要なものは全部持ってきたと思ったんだけど・・・・?」
「・・・違う・・・、そうじゃない、忘れ物したのは俺・・・」
「ゴンが・・・?」
「キルアに・・・・頑張ってきてねって言うの忘れたから。だから・・・」
「そんなことで・・・・!」

キルアは自分から目をそらして頬を染めるゴンをみながら、なんだかすごく幸せな気分になった。
「俺にとってはそんなことじゃないんだ・・・!
俺、ほんのちょっとだってわかってるんだよ!!!
すぐ戻ってくるって分かってるんだよ??でも、それでも行かないで・・・!とか言いそうになってちゃって、だからそれ隠そう、隠そうとしてたら言わなきゃいけないこと忘れてて・・・・」

ゴンは少し目を赤くして、最後の方はだんだん声を小さくしながらそんなことを言う。
「ゴン・・・・、あのさ、ぎゅっってしていいか・・・・?」
「え・・・?」
ゴンが返事をする前にキルアは、ゴンをぎゅっと抱きしめた。
「俺さ、俺もさ、ゴンとちょっとでも離れるのつらいと思ってるんだ・・・。
だから、俺に頑張ってねって言う為だけに俺のこと追いかけてきてくれたんだなーって思ったら嬉しくてさ・・・・」
「キルア・・・・」
「・・・・・そうだな・・・・・」
「キルア・・・・・???」

ゴンは、何か一人でぶつぶつといい始めたキルアに対して疑問の声をあげた。
「しばらくゴンと離れ離れにならなきゃいけないから、ゴン中毒にならないようにゴン貯めしておく為にも、もうちょっとこうしておこうかなー・・・・・v」
キルアはゴンを抱きしめていた腕の力をもっと強くさせてもう一度ぎゅうぅと抱きしめる。
「ちょっと・・・っ、キルア・・・・!」

 こんな風に焦っているゴンと、この幸せをかみしめているキルアを見つめている者が一人。
「ゴンったら、急に『ごめん!』とか言って逆に走り出したと思ったらこういうことだったのねぇ・・・。 まぁ、なんとなく分かってはいたけど・・・」
ビスケは二人を見ながらぼそりという。

  そして、このあといつまで経っても離れようとしないキルアに、このままにしておいたら遅れることにもなりかねないと感じたビスケにゴンから離されたのは言うまでもない・・・・。

END